和装イング代表 三輪 明

こんにちは。
株式会社 和装イングの代表 三輪明です。

京都で53年、長襦袢の仕立て縫製を行ってきました。

歴史ある京都で53年というと、まだまだ若いと言われますが、
お客様に良き品をお届けするため、
常に、職人のこだわりを続けてきたと思っております。

この度、ホームページを訪れていただいた方のために、
およそ70年、わたくしの歴史を振り返り、
ご挨拶に代えさせていただきます。

代表プロフイール

1941年(昭和16年)京都市内で生まれる
兄弟は兄、姉、妹 4人兄弟  
子供は男二人

  • 家業:灰汁付(あくずけ)加工
    紅染めの前工程で、紅色の発色を色鮮やかにする、非常に特殊な仕事です。
  • 趣味① ゴルフ
    仕事以外の頭の中の二割位はゴルフのことを考えています。
  • 趣味②写真撮影
    体にパワーがなくなったら、写真撮影を復活しようと思っています。
  • 趣味③:音楽鑑賞
    主にジャズ演奏。特に、ギター、オルガン、ピアノの演奏が好きです。
  • 性格:
    自分自身は明るい性格と思っていますが、他人様から見ると神経質(自分自身は細やかな気遣いをする)に見えるらしいです。
  • 専門分野:生地の耳合わせ。
    長襦袢を延反機で70枚位延反して積み上げた後、生地の片方の耳を50~70か所程0,5~1ミリ位の誤差で生地の耳を揃えること。
    (この作業は長襦袢を裁断する時、片方を起点にして、寸法取りをする非常に大切な作業です。これによって製品の正確な寸法が決まります。)

和装イングの歴史

着物業界の新人として

高校卒業後2年程、会社勤めの後、兄が三輪縫製として、和装品の縫製業を始め、私が会社退職後、1年程一緒に仕事をした後、兄は呉服販売の仕事に従事。
独立、、私と母親と2人で、解らないことは母親に聞きながら、長襦袢,半襦袢の縫製業をスタートしました。

最初は裁断だけ家の中で作業をして、後工程はミシン仕事と、衿裏のクケ、袖のシツケと二つの工程に分け、内職という形態で仕事をしていました。

その頃の長襦袢の加工賃は、無双袖で60円位、単衣袖で50円位の金額だったと思います。今では信じられない金額です。

業界の中では若年、人脈もなく、経験もなく、ただ与えられた仕事を真面目にこなす日々でした。そんな中、製品のレベルは,あまり変わらないのに加工賃が違ったりと不合理なことがいっぱいありました。そこで、どうしたら自分の店が得意先から必要な存在になるかということに、腐心しました。

その頃の、縫製業界は内職で加工することが一般的で、製品全体のレベルが低く、レベルアップしなければという思いでいっぱいでした。

まず最初に手掛けたことは、衿の型が一枚一枚、不揃いなのを、中に入れる衿芯を、最初に「ばち衿」に裁断、衿付けして、外注先に依頼する。結果100人が作業しても、同じような衿に仕上がりました。

袖付けの、スタート,終わり,「身八つ口」下側の3か所に綻び防止のため環止め(ジャバラ止め)をするミシン導入。

昭和52年着付け教室の、教材用長襦袢を大量に作るようになり、自動延反機を導入。当初機械は洋装用に作られているため、和装用に改良するのに苦労しましたが、今は上手く対応出来るようになりました。

その頃から、貸衣装用長襦袢を扱う得意先から、注文を頂けるようになり振袖用の長襦袢を大量に縫製するようになりました。時期が延反機の導入時期と重なり、機械が一往復すると、振袖一枚分延反ができ、作業効率が非常に高まりました。

昭和55年頃から、内職でのミシン仕事、衿裏の「くけ」、袖の「しつけ」などの、作業をしてくださる人が少なくなりました。又製品の品質向上、均一な商品を作るため自家工場生産を始め、色々な特殊ミシンを導入して、製品のそれぞれの部分に最適なミシンを使い、特に長襦袢の、脇「クケ」の部分を綺麗に、仕上げ出来る人が少なくなり、この部分を機械で作業するように変え品質向上
、に努めました。

昭和59年頃、以前から、縫製の非常に高いレベルを、求められる貸衣装店があると聞いていましたので、得意先の社長に取引できるようにお願いをして、何度か訪問をされた後、私も一緒に訪問をさせて頂き,縫製の工程を細かく説明をさせて頂き、その後、取引のお許しを得て、その場で振袖用長襦袢200枚の注文を頂きました。この貸衣裳店に、自社商品を納入出来ることを目標にしていましたので、商売を始めて、一番嬉しかった出来事でした。

その後、自分の人生を振り返ってみても、仕事上一番大きな転換期と、一番充実した10数年間だったと思います。

後日、その店と取引のあった人から聞いた話ですが、「やっと長襦袢らしい長襦袢を、仕入れる店に出会えた。」と社長がおっしゃっていた、ということを聞いて、期待を裏切らないようにと、気を引き締めると同時に、非常に嬉しかったです。

この時思ったことは、小さな店でも、きちっとした物造りをすれば、大きい取引先でも相手にしてもらえると、思いました。

その後バブル崩壊、中国製の縫製品が徐々に増え、生活様式の変化、女性の社会進出(しかし縫製加工という業種には人が集まらず不人気)、又京都室町の問屋さんも徐々に力が弱くなり、以前は商品が大量に出るシーズンとそうでない時期との差(物の生産力は短時間で増やせない)を埋めるためシーズンオフの時でも、商品の発注があり年間通じて、ある程度の仕事がありました。

しかし、最近はそのようなことはなく、ここ20年程前からシーズンオフの時に、働いて頂いている従業員員さん、「くけ」をして頂いている外注の皆さんの、仕事を確保するため、自社で生地を購入をして、オフシーズンを営業しています。

このように、問屋さんの役割も徐々に変化しています。

針仕事をする環境から言いますと、長襦袢では、衿裏を「クケ」たり、袖のシツケをしたり、半衿を付けたりと、いろいろな作業があります。

約20年程前から、既製品でも半衿を付けて欲しいという要望が多くなり、又日常的に、針仕事をする機会が少なく、半衿付けの上手く出来ない方や、邪魔くさいなどの理由で着物を着る機会が、少なくなっている環境です。

高級仕立て衿「衿美」の開発

当社も約20年程前から着物の二つのネックである、帯結び、半衿の取り換えで長襦袢に関係のある、半衿付けがもっと簡単で、綺麗に誰でもが出来ないだろうかと思い、開発をスタートしました。

仕事中も以外でも、いつも「仕立て衿」のことを考えていました。何十枚も衿のデザインを考え、製図を引き、ボール紙を型通りに造り、完成のイメージを創造したり、ある程度出来たら、実際の半衿と、接着芯を使って現物を縫って人形に着せたり,妻に試着してもらったりして、着姿、衿の硬さ、「仕立て衿」の取り付け方法等、色々と試してみましたが、なかなかいい結果が得られませんでした。

考えが煮詰まると、しばらく「仕立て衿」から離れ、何か良いアイデアが浮かぶと、また再開するということの繰り返しでした。

そして、平成15年の春に、仕立て衿「衿美」という名前で、リビング新聞に広告を出し、販売を始めました。

今思いますと、その時は良い商品が出来たと思い発売しましたが、余り売れませんでした。理由をお買い上げ頂いたお客様、周りの人の反応などを、お聞きして色々と改良点がわかり、少しずつ、研究して改良していきました。

まず、半衿の素材を、普通の半衿から、東レ、シルック の「バイアス半衿」に換えました。

立体構造なので、縫製作業は難しくなりましたが、衿山が非常に柔らかいライン、上品なふくらみ感、光沢がでること、黄変、カビ、等になりにくいなどの理由です。

また、お客様の要望から、縫い糸も表側に見えるところは ,透明糸に換え、後ろ衿の内側の外側から見える部分も,糸が見えにくくなりました。

衿先の裏側に折り返す部分も、約1寸(約4㎝)程返るように変更しました。この作業は簡単なようですが、根本的にラインの変更しなければならず、難作業でした。

最も苦労したのは、衿の硬さです。お客様も硬いほうが好き、軟らかいほうが好きとさまざまです。全体が硬いと、立体構造なので、首の周りに、硬い異物を巻きつけているようで、違和感があり、あまり軟らかいと、着物に負けてしまいます。

必要なところは硬く、(肩山から後ろの部分)衿先に下がるほど段々に軟らかく(五段階に)接着芯を張り付けてあります。着用感も無理がなく、自然に体にフィット、後ろ衿の「皺」や「弛み」が出来ないので、ラインの美しさが違います。又お客様の要望により、部分的に硬さを変えるときもあります。

取り付け方法も、最初は袖の「しつけ」をするような、方法でスタートしましたが、意外と時間がかかり、上手くいきませんでした。

次に、ワンタッチテープで取り付ける方法を考えました。この方法は、テープの取り付け位置、幅、長さを検討し、「仕立て衿」の裏側に、硬い方のテープを、ミシンで縫い付け お客様の持っておられる長襦袢の、表側の衿付け側に、相手方のテープ(長さ10㎝×幅2センチの、柔らかく針通りのよいテープ、)を一度だけ縫い付けるだけで、「仕立て衿」の脱着が簡単に出来ます。

最初は五か所で固定することにしましたが、お客様の希望で,肩山の部分に半分の長さのテープを、付けるように改良。

着物のあまり着慣れておられない方、着物でお仕事をしておられる方、踊りの稽古をされている方等、襟元の崩れやすい方のために、前の打ち合わせの部分に、約10㎝程の幅でアジャスト出来るように、テープを付け,着崩れ防止の機能をつけました。

仕立て衿「衿美」は、半衿の種類も、色無地、友禅染、刺繍とあり 素材も、塩瀬、縮緬、絽と色々あります。テープの位置もすべて同じで、その時の目的に合わせて、簡単に、取り替えが出来ます。

今後の夢 

  • もっと手軽に着物を楽しみたい、
  • でも、半衿をその都度縫い付けるのはとても手間

そんな理由で、着物をあきらめたり、着る回数を減らしたりしている人達のために、少しでもお役に立てればとの思いで、仕立て衿「衿美」を、一枚一枚、丁寧に造っていきたいと、思っています。