美へのこだわり

着物の美しさは、四季豊かな日本が生んだ、文化の美しさ。

和装イングが考える美について語らせていただきます。

着物の美

着物は、着る人を選ぶ。

というと大袈裟に聞こえますが、
特別な人しか着られない、似合わないということではありません。

洋服と同じように、着物にも1人1人に合ったお色や柄があり、
同じ着物でも、帯や半衿を変えるだけで全く印象が異なり、
ご自身にあった着付け方があります。

季節に合わせて小物やお柄を変えてみると、
和食も「季節を楽しめる」ことが取り上げられているように、
お着物も季節の移り変わりを存分に楽しむことができます。

日本が世界に誇れる四季折々の豊かな自然。
それを存分に味わいながら人生を満喫する。
そういったところに、着物の美があると思います。

また、着物は体の動きが制限されますので、
それによって繊細で美しい所作が導き出されます。

特に着物をめされた女性の佇まいは、
周りの空気を凛とすることも、柔らかにすることもできます。
外国人のパーティなどでも、お着物でご参加されている方は
とても清楚な印象で迎えられるようです。

伝統技術で作られた着物の生地そのものにも価値がありますが、
やはり着物を着ることで季節と溶け合い、美しい振る舞いが生まれるといった
手に触れることができない美しさがあると思います。

縫製の美

先人たちが築き上げてきた和裁という技術は、言葉にできないほど細やかな技術です。ゆえに、あまり注目されてきませんでしたが、美を創り上げる縁の下の力持ちだと思います。

和裁の特徴を少し紹介すると
・布の特性を活かすために様々な縫い方があります
・色柄を引き立てるように縫い目を隠すことができます
・実用に耐えられるよう、しっかりと縫い付けることができます
といったことが挙げられます。

お着物を着た時に、どんな力が加わるのかを計算し、
ひと針ひと針、均等に美しく仕上げていくことで、
形の美しさに加えて、着心地の良さを実現することができるのです。

実用の美

ほんの数十年前までは、皆さんほとんどのご家庭で着物をお持ちで、母や祖母から受け継いでいらっしゃいました。
時代の流れとともに、近年では、「着物」というと特別な日に着るもの、特別な方と会うために着るもの、となってきました。

中でも多くの方がおっしゃられるように、
「着物は着付けが大変」「気軽に洗濯ができない」「動きが制限されて窮屈」
というご意見が多いですね。

しかし、これから限られた資源を大切に受け継いでいくことを考えると、日本が育んできた着物文化は、示唆に富むと思います。

丁寧に作られた一反の布生地は、何世代も使うことができ、着物としての役目を終えてもなお、おかばんや小物といった別の利用方法があります。
そこには、慎ましい実用の美があると思います。

私たち和装イングは、一介の長襦袢仕立て職人ではありますが、この先人の知恵が忘れ去られることがないよう、着物文化を裏で支える役目を担っていきたいと思います。