半衿をうまく付けるための隠れた秘密

長襦袢専門の仕立て屋を53年間、経営者そして現場の職人として、
携わってきた経験から感じたことを書きます。

着物の美しい着姿の大切なポイントは、長襦袢の着付けです。

その中でも特に顔に近い衿周りです。

ただ着付け以前の問題を解決しなければ美しい着姿は、表現できません。

糸と針を使うことが少ない最近では、半衿付けに苦労されている人が多く、
特に後ろ衿の部分が、すっきり美しく、仕上げられないという人が多いと思われます。

私も「衿美」という仕立て衿を、より綺麗に付けていただくために
約1,000枚程度の長襦袢の衿直しを、させていただいた経験から、
感じた問題点があります。

後ろ衿が綺麗に仕上がらない理由

後ろ衿の内側に多くの波打ちとシワが入るのは、
半衿付けが問題なのではなく、元々の長襦袢の衿の仕立てが原因です。

半衿の土台となる長襦袢の衿の、首の後ろ衿側に厚みがあるため、
半衿にもシワが出てきてしまいます。

シワのよっている長襦袢

このような長襦袢だと、どんなに頑張って半衿をつけても、
きれいに仕上がりません。この場合は土台を直さないといけません。

多くの場合、長襦袢の衿布は、
・細長い長方形の布で縫い、
・時には二重の衿布で仕立てられ、
・さらに剣先から反対の剣先までの間に
 表衿布と同じ巾の長方形の衿芯布を付けて、
仕立てしてある長襦袢なのです。

よくある衿を分解した写真

さらに衿の外側に、半衿を縫い付けるという作業があり、
なかなか綺麗なすっきりした半衿を付けられた衿には仕上がりません。

当社ではこのように衿が分厚い長襦袢を、多数直してきました。

そこでご提案です。

衿布及び衿芯の裁断について

長襦袢の衿布、しっかりした三河芯をえり芯として、
下図のように裁断をして、衿付けをすると、
首の周りに余分な布を織り込んで作る作業が避けられるため、
後ろ衿の内側を含め非常にスッキリした衿に仕上がります。

衿布と衿芯の裁断

是非、これから長襦袢を仕立てされる場合、このような方法で
仕立てを依頼してください。綺麗な衿になります。

お直しをした長襦袢の衿

衿美装着
(衿美を装着した状態)